



Patti Smith
Live in Usher Hall Edinburgh
パティースミスはミュージシャンであり、詩人、画家、写真家と、まさに真のアーティストである。
パティースミスを始めて知ったのは大学時代だった。
ある後輩のバンドがコピーしていたのだ。
その「Because Of The Night」が頭から離れず、早速LP版を買いに走ったことを今でも覚えている。
それから2枚3枚と彼女のアルバムを集めて聞いていた。
当時のhirokoにはその彼女の詩を奥深くまで読み取る能力なんて、全く無かったが、不思議とメロディーだけでも深く心を打つ何かを感じていた。
いつしか歳を重ね、ブルース・スプリングスティーンとの合作であるこの曲がhirokoのお気に入りベスト10に入るほどのインパクトを受ける。
これほどの大人の女を歌い上げた曲はない。
パティー・スミスは1946年12月生まれる。幼少時代は虚弱体質で寝ている事が多く、読書や音楽がパティの救いだった。
大人になってからも何かいつも蒼白な虚弱体質のイメージは抜けないが・・・
詩に目覚めランボーに憧れるようになる。
(ランボーとは言ってもシルベスタ・スタローンのランボーではなく、フランス文学史上におけるボードレールと並ぶ象徴主義の代表格であるランボーのこと)
彼女はまさに詩人であるし、スタートも詩の朗読という形で始まった。
ところが、ストーンズやドアーズなどのROCKに強い影響を受け、バンドをバックに詩を朗読しているうちにミュージシャンとしての才に目覚めてゆく。
大学時代、教授との間に女の子を出産したのだが、健康も生活力も無かった彼女は子供を里子に出して働き始め、67年春、16ドルを握りしめて一人でNYへと旅立った。
ロバート・メープルソープや、サム・シェパード、ルー・リード、アンディ・ウォーホールなどとの出会いを経て、自作の詩を演奏にのせて歌うようになる。
彼女のロックン・ロールと詩のパフォーマンスはNYのアンダーグランドを中心に話題を集めつつ、74年にシングル、「PISS FACTORY」でデビュー。
75年デビュー・アルバム『ホーセス』を発表する。
この頃のNYにはテレヴィジョン、ラモーンズ、ブロンディー、トーキング・へッズなどなど、”ニューヨーク・パンク”と呼ばれるシーンが形成され、パティはその中でも象徴的な存在となった。
そして79年までに4枚のアルバムを制作、精力的に全米、ヨーロッパと演奏旅行を続け,ニューヨーク・パンクの女王といわれていた。
パンクと言うと、なにやらガチャガチャしてやかましいロンドンのパンクロックを思い浮かべる人も多いだろうが、ニューヨークパンク、特に彼女のスタイルは時代を超えたインテリジェンスなものだった。
打ち上げ花火の如く一世風靡をして華々しく散っていたほかのパンクロックとは違うところである。
彼女の音楽そして詩は今尚、輝ききらめいている。
“ロックン・ロール・ニガー”などはかなりインパクトの強い曲で、オリヴァー・ストーン監督の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)、作品冒頭と中盤で使われていたという曲も彼女のものだと知って、この作品の中で2度も同じ歌が使われている。
いったいどのような人生を送れば、どんな人々に出会えば、あのような詩を書くことができるだろかと思うくらいかなり高度というか芸術的なものだ。
76年『ラジオ・エチオピア』、78年『イースター』(スプリングスティーンとの競作”BECAUSE THE NIGHT”が全米13位を記録する大ヒット)、79年『ウェイヴ』と名盤の数々をリリース後パティはいっさいの活動を止め、フレッド・D・スミス(元MC5のギタリスト)との結婚生活に。
hirokoもその頃から音楽とは遠ざかってしまい、Patti Smithを聞くこともなくなった。
ところが、後年ふとしたことから、再びhirokoのテリトリーにパティーが浮上してしまった。
2001年のFUJI ROCKの収録ビデオを日本の友達から送ってもらった。
勿論お目当てはトリのニールヤング+クレイジーホースを見たいがためである。
ところが、そのビデオに収録されていたPattiの姿、演奏に度肝を抜かれた。
なんとエネルギッシュで、パワフルなパフォマンス。
平和を祈る強いメッセージの1つ1つに凄まじいものを感じてしまった。
このFUJI-ROCKに関してはニールには申し訳ないが、パティーを絶賛する意見がちまたでは多かった。
パティはステージで何度も戦争の悲劇と、平和を願い続ける大切さを訴えていた。
そして、ヒロシマ、ナガサキを決して忘れないようにと。
「この一本は平和のため、この一本は恐怖に打ち勝つため」と、ギターの弦を一本ずつ引きちぎっていった”
グロリア”・・・。
現在も活動を続け04年4月に9枚目のアルバム「Trampin'」をリリース、エネルギッシュで力強く、その音楽表現がとても繊細で女性らしいところを感じさせてくれる。
7月1日、エジンバラはアッシャーホール。
いつもはシート席が1階も埋っているが、今回は椅子が取り外されて1階はスタンディングでシート席は弓を描くようにして2階3階と占めている。
ステージを捉えるにははるかに距離がある。
こういう暑いROCKライブはやっぱりスタンディングでどえらく前を陣取りたい。
数人の男女がもう既に最前列を押さえて反対向きになって座り込んでいる。
どうやら一人だけ入り込める余地を見つけたhirokoはすかさず、ずずずっと入り込んで柵を背に座り込んだ。
クリス君と向かい合って、パティーの登場を待つ。
8時半スタートから約20分遅れの8時50分、とうとう会場内の明かりが消えた。
出てきた!出てきた!
hirokoは柵にもたれかかる。いつもならば前方の背の高い観客たちの合間を縫うように首をあちこちに曲げて背伸びをする必要は今夜は無い。
前方にはステージがあるのみである。
さぁ、これほどの前である。
いつもの隠し録音のクオリティーとなると、全く話にならない。
いい録音がしたければ、やはりPAの近くのど真ん中を陣取るに限るが、ステージにはほど遠くなってしまう。
クオリティーを取るか、楽しむか・・・の選択に迷わず後者を選んだ。
何せ、生のPattiを見るのは初めてなのだから・・・
ステージに現れ出でたPattiはすんごく可愛いかった。
58歳の女性がこれほどの可愛さを持つなんて・・・感動だ。
相変わらずの華奢な体・・・そしてとにかく驚いたのは、彼女のファッションである。
化粧は一切無い。髪はブラシをいつかけたのだろうかと思われるほどのボサボサ。
白のブラウスに首には十字架のペンダントが光っている。
黒のパンツスーツでズボンのすそは八分丈、そこに白いソックスをはいて、茶色の靴。
羽織っている黒のジャケットが凄い。
これがすそがボロボロでテカテカに光っている。
袖もボロボロにほつれている。
全く芸術家特有のファッションだ。
これほどのボロでも彼女が着るとどうしてこう格好よくなるんだろうか?
???ん??このジャケットはもしかして・・・・?
ひょっとして・・・彼女のデビューアルバムのHorseで肩にかけていたあのジャケットではなかろうか?
時代的にそんな気がする。
そのジャケットを今尚、着続けているのだろうか?
すぐ目の前に佇む彼女を眺めながら、いろんな憶測が飛び交う。
顔をくしゃくしゃにして、笑顔を振り撒いている。
オープニングは最新のアルバム「Tranpin」からのtranpin。
ゴスペルをベースにした優しい静かな静かのメロディー。
全く、素晴らしい。
声と歌詞とメロディーがこれほど一体化した歌は、そうそうないだろう。
彼女の歌は反戦や社会への矛盾を歌ったメッセージソングものが多いのだが、母のRoseのために歌い、ジム・モリソンの影響を受けた彼女はジムの死後30年という今夜、彼のために歌う。
スコットランドのライブならではのロバートバーンズの詩YE JACOBITES BY NAMEをメロディーに合わせて歌い上げる。
ロバート・バーンズはスコットランドを代表する偉大な詩人の一人である。
彼女の詩に対する思いやり、繊細な表現力、力強い息遣い。
全く彼女の才能の素晴らしさが発揮される。
ただ単にがちゃがちゃうるさいパンクロック歌手でないところがそこである。
声がちょっと詰まったとこでは、「ポーチド・エッグとポーチド・ハドックの食べ過ぎよ!素晴らしいわ!」とスコットランドの伝統料理を褒め称えた。
新旧織り交ぜての選曲に観客は次第に興奮度を増す。
中盤、彼女は吐いていた靴とソックスを脱ぎ捨て、裸足になる。
あっという間の2時間だった。
生のPattiをこんなに真近で見れるなんて!感動。
ステージは素晴らしく、ただ、一つだけ残念だったのは、大ヒット曲であるBecause The Nightが選曲されなかったことかな?
そしてもう一つ・・・隣のおっさん・・おっさんと言ってもまぁ、40台半ばあたりで身なりもきちんとしている。
決してヨレヨレの酔っ払いのおっさんではない。
しかし、おのおっさんの息がえげつなく臭いのだ。
最初は・・・???ん?臭い・・・これは口臭というものだ・・・遺体どこが発生源なんだ?
まさかステージから流れてくるものではなかろう・・・ん?あたしかな?と自分を疑って、口もとに手を当てて匂いをかいでみたが、やっぱ自分のものではない。
おっさんだ!隣のおっさんだ!
こういう熱気ムンムンのコンサートのしかも密度の高い身動きのとれない前方で、こう臭い奴がいるとたまんない。
よっぽど、トントンと肩をたたいて、「おっさん、息せんといて!臭いねん!」と、言ってやりたい心境だった。
頭1つ出ているクリス君はスタンディングのライブの際にはいつもhirokoの後ろを陣取っている。
彼が一生懸命にデジカメで写真を写そうとしていたのだが、hirokの隣のおっさんがどえらく背が高く、なかなか捉えられなかったので、クリス君に場所を譲る。
アンコール最後のグローリア、盛大なエールと拍手に見送られて、Pattiは姿を消し、エジンバラの幕を閉じた。
帰りのバスでクリス君。
「あの隣のおっさんの息!!!臭いのなんの!」
「やっぱ!あたしも途中で気分が悪くなりかけたがな!」
コンサートの前には歯磨きしてからいきましょう!である。
友達でミュージシャンのカレム君が言っていた。
Pattiはライブ終了後はあるPUBへ行くぞ!プレイハウスの3つ先のPUBだ!という情報を貰ってはいたのだが、翌日は仕事のあるクリス君。
ここはPUBを断念してバスへと乗り込んだ。
Setlist
1.TRAMPIN'
2.JUBILEE
3.STRIDE OF THE MIND
4.MOTHER ROSE
5.BRING IT UP
6.PRIVILEGE(SET ME FREE)
7.SPACE MONKEY
8.BENEATH THE SOUTHERN CROSS
9.CASH
10.YE JACOBITES BY NAME
11.MY BLAKEAN YEARS
12.DANCIN'BAREFOOT
13.FREE MONEY
14.PEACEABLE KINGDOM
15.GHANDI
16.PEOPLE HAVE THE POWER
17.TRESPASSES
18.WE THREE
19.GLORIA