
マッセルバラのお見事さん
その1 下品親娘
その2 お花ちゃん
その3 プリングルさん
その4 ミセス・アンダーダウン
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ミセス・アンダーダウンの巻
捕まってしまった。
最近お天気がよくなってきて、お外へ出る機会が多くなってくると、御近所さんとも顔を合わすチャンスもそれだけ多くなるというものである。
我家は6軒が入居しているアパートで、このアンダーダウンばぁちゃんは1階に一人で住んでいる。
彼女は今年80歳という御高齢。
何せこのアパートが築50年ということで、このばぁちゃんは新居当時からの唯一の住居者である。
£8,000で購入したというのだから、今では桁が1つ違う跳ね上がりようである。
何せ50年も住んでいるのであるから、この界隈のことは勿論何ぁーんでも知っている。
彼女に捕まってしまうと、必ず彼女のロビングルームで紅茶を入れてくれて昔話を聞かせてくれる。
昔は田舎の御近所付き合い、どこも同じようで、階6軒がそれぞれ自由に出入りしながら、玄関の鍵をかけずとも泥棒の心配もなかった長閑な時代である。
1階の彼女はお茶どきになると、リビングに備えついている水道タンクのタンクというか水道管をコンコンと叩いて「お茶が入ったわよ!」と2階へ合図を送るなんて時代だったそうだ。
どこそこの誰誰がいつ入ってきて、いつ玄関のドアを取り替えたとか、まぁそれはそれは素晴らしい記憶力なんである。
さて、このばぁちゃんが何故にお見事さんなのかというと、この80歳という年令にそぐわない元気印なばぁちゃんだからである。
とにかくお天気がいいと、必ず庭をいじっている。
庭は見事なまでに小奇麗に気持ちいい。
時折、悪ガキが放り込むお菓子の開き袋を、ブツクサ言いながら拾いながら、御掃除をしている。
hirokoも専業主婦なので、お天気がいいと、階段や玄関先の掃除をする。
さっさと箒で掃いて、モップをかけるのである。
するといつも出会ってしまう。
彼女が1階全体を奇麗にしてしまうと、hirokoは3階だけでは申し訳なくなるので、2階もオマケでやってあげちゃうのだ。
えてして田舎のお年寄りは都会のお年寄りよりもはるかに元気である。
空気のせいかもしれないが、何でも簡単に手に入る都会生活とは違って、少しでも生活し易いように工夫や知恵を絞っているから、頭をつかっているからボケがくるのが遅いだろう。
いつも身体を動かしているこのアンダーダウンばぁちゃんも昔は水泳をやったりしていたそうだ、「今でも出来るんだけどねぇ。」
と笑いながら話してくれた。
(ううう・・・危ないから辞めた方がええで・・・)
さて、話がはずんできて、庭同様に小奇麗に片付いている彼女の家。
廊下にペンキの缶が置いて有るのを見て、ふっとhirokoは我家のキッチンとバスルームを塗り替えてみたいと前々から思っていたので、聞いてみることにした。
「あのね、私、ペンキ塗り替えやってみたいと思っている・・・台所は入居当時は真っ白だったけど、やっぱり料理や煙で茶色になってきているし、目立たないところで真っ黄色なんてのがいいなぁ。・・・」
「あら、あなたにはハズバンドがいるじゃない!彼がやってくれるでしょ?」
「ダメダメ!うちのクリス君はDIYはまぁーったく駄目だもの・・・・」
するとアンダーダウンばぁちゃんはソファーから転がり落ちそうになるくらい仰け反りながら、目を大きく見開いて驚く。
(そこまで仰け反りかえらんでも・・・・)
「冗談でしょ?DIYが出来ない?嘘でしょ?」
げっ、やっぱスコットランドではDIYの出来不出来が男としての証明なんか・・・しかし、そこまで驚かんでも。。。
「この家のペンキは全てわたしが塗り替えたのよ!いらっしゃい!」
ばぁちゃんは家の中という家の中を案内してくれて、ペンキやハケやロールまで見せてくれた。
今度はこちらが仰け反りかえる番である。
「嘘ぉー!冗談でしょ!」
「簡単よ!ほーんと簡単、楽しいわよ!やってごらんないさいな!」
「うっそぉー!」
「もし、わからなかったら、手伝ってあげるわよ!」
おっと・・・そいつはあぶねぇ・・・・えへへへへ・・・と笑いでごまかす。
しかし御見事なまでの美しい壁。
こいつを全て80歳になろうとするばぁちゃんが一人でやってたんだ?
すんごいなぁ。
ばぁちゃんがデモンストレーションまでしてくれたので、hirokoは俄然やる気になってしまった。
今度7月にクリス君の1週間の休暇が待っている。
今回はニューヨーク、DVDレコーダーのパナソニックさん、そしてマルチコンバーター君などの大散財の後、どこも行きようがなかったので、大人しく家でレンタルDVDを借りて映画三昧を計画していた矢先である。
こいつはいい。
ペンキを塗るぞ!キッチンを黄色、バスルームは柿色にしてやろう。
果たしてうまくいくやろか・・・・
今日も又お外で出くわした。
「いいお天気ねっ!」
「あら、あなた何枚服着ているの?」
「ええと、これとこれとこれで・・・3枚」
「Oh!no!ミセス・マック!まるでおばぁさんよ!あなた。。。わたしはこれだけ・・・」と半袖のTーシャツをひらひらさせている。
参った逞しいばぁさんである。
この元気でポジティブなばぁちゃんが1階にいてるだけで、そのパワーを頂いている。
いつまでも元気で長生きしてほしい隣人である。
プリングルさん
ブランド物の服を着ている人種は大きく分けて4通りある。
ブランドものがブランドと見えない程、日常生活の中にごく当たり前のように自然に入り込んでいるタイプでそのブランドそのものに負けていない。
まるで日常着となっている人達。これは俳優とか大富豪とかのごくごく一部である。
そして、日常着とはいかないまでも、そのブランド物がしっくりピッタリ似合っている、つまりTPOをうまく掴んで自分のものにしているホンマ物のお洒落な人。
最後に、成り金や嬉しがりでやたらブランド・ブランドで身を固めてはいるんだけれど、どこからどう見たって¥1,980の特価大バーゲンとしか見えない、所謂、似合っていない人達。
彼等にとってはブランド物は一張羅なのだから、「さりげなく」という言葉は見当たらない。
世の中には圧倒的にこの最後に属しているおっさんやおばはん連中を目にする機会が多い。
特に海外へ旅行する団体ツアーの中にこの人種はわさわさしている。
「ほうら!見て見て!ほうら、ここだぜ!ほら、胸!胸を見てよ!ほうら、ちゃんと付いてるやろ?ワニさんや!ブランドを着てるだぜ!
ねぇ、見てったらぁー!」
と、顔に大きく書いてある。
そういう人を見ると、是が非でも胸なんぞ見てやりたくない。
そおして番外編にブランドには一切興味のないうちらのような人となっている。
まぁ、興味があっても買えないんだから仕方ないが・・・
何度もお話に上がってくるレディース&ジェントルマン。
この古き良き伝統は今や最近のUKでは大きく失われつつある。
しかし古き良き時代を知る熟年、熟女の中にはやっぱりレディース&ジェントルマンを地で行ってる人もいるんだな。
我義母のノーラは典型的なレディースである。
とっても元気はつらつとして、おっちょこちょいなのだが、いつ訪問しても家の中はいつも小奇麗だ。
まさに自分の服に構っているわりには家の中はゴミだらけ・・・なんてぇーのはよくある光景だ。
だが、ノーラの場合はいつだって小奇麗である。
別にブランド物であろうがなかろうが、ちょいとした小粒のアクセサリーでさりげないお洒落を楽しんでいる。
クリス君はどうかというと、これが全くお洒落に感心を示さない。
服装には全くの無頓着で、コーディネートという言葉すら彼の辞書には存在しない。
ところが、そんな無頓着な男でもバシっとスーツを着せるとおったまげるほどジェントルマンに変身してしまうから驚きである。
頂物のブランドのセーターやポロシャツを着せても嫌味がない。
そして1つ判っていることは、男は靴を捌く時にジェントルマン度が測定出来るということ。
靴を履く時にまるで靴をいたわるように丁寧に靴紐を外し、決してコンコン、トントンとやらない。
時間をかけて靴を履いているそういう姿を見ていると、やっぱノーラの躾の良さが伝わってくる。
これだけいい事を書いていても、プレステゲームを必死の形相でFFFとコントローラーに向かって叫びまくっているクリス君を見ると前述を撤回したくなってしまうが・・・
少々なりともジェントルマンの素養が残っているとは思ってしまう。
さて、このマッセルバラにもジェントルマン中のジェントルマンが存在しているから嬉しい。
このジェントルマンのお気に入りは「プリングル」のVネックのセーターである。
マッセルバラ生活の中で、夫のクリス君の次に一番多く接しているのがこのプリングルさんなのである。
彼はリーベンホールというラウンドアバウトの一角にポツネンと佇む小さなニュースエージェントの中のこれまた隅っこの一角に設けられた局員一人が窮屈に入れるだけのスペースにちょこんと納まって、毎日地域社会へと貢献している郵便局の局員?局長さん?なのである。
ここは奥さんと二人で経営していて、店の中には新聞や雑誌、カード、タバコ、チョコレート、食器洗剤、ベーコンから牛乳、トイレットペーパーまで何でも置いている。
プリングルさんは年の頃は60歳あたりか50歳後半、ちょいと禿げてはいるがいやらしさが全くない。
いつもにこやかでてきぱきと郵便業務をこなしている。
こんな小さな田舎街なのだから、どこそこの誰誰さんのことは何でも知っているってタイプだ。
ある時、列に並んでいると、彼はかなりなお年寄りと応対していた。
何やら、電気かガスか電話か・・・公共料金の請求書のことでおばぁちゃんはあたふたしているのである。
そうなのだ、どこの国でも役所や公共料金なんから来る手紙って、お年寄りにはちょいと理解出来ないことが書かれてあったり、どう対処していいのやらわからないことってあるようだ。
この時のばぁちゃんもまさにそれで、若い人なら、即座に差出人に問い合わせるなり手紙を書くなりして、真相を突き止めようとするが、お年寄りにはただただオロオロするばかり。
そこで正義の味方、地域社会の御世話役、プリングルさんは言った。
「その請求書置いといて、僕が問い合わせてあげて、また知らせてあげるよ!」と。
うっそー!郵便局のおじさんが他人の請求書のゴタゴタまで付き合ってやらんといかんわけ?
まぁ、都会のまちなかの郵便局では全くありえないことがここマッセルバラの郵便局ではありうるのである。
何度も毎日のようにこのプリングル君を観察するようになってしまった。
驚くことに、彼はその隅々までの人々の名前を把握しているのである。
「はーい!今日はいいお天気だね!ジョージ!」
「ブレンダ、調子はどうだい?」
「ジョニー、草競馬は2時半からだよ!」
「ええとぉー!ヒロコ、ここにサインしてくれるかい?」
と、とうとうhirokoまで名前を知られてしまっている。
まぁ、一番最初に訪れた時から、「こんにちわ!」などと日本語で挨拶されてしまったし、ましてやこんな小さな地域で日本人はhiroko一人なんだから目立たぬ訳はないだろうが・・・
それ以降やたら仲良くなってしまった。
だいたい名前を告げた覚えもないのに、次から「ヒロコ!」となった訳だから、差出人のシールを盗み見したことになる。
そのうち「ヒロコ、君のホームページ見たよ!だけど日本語だったから訳が分かんなかったけど・・・」ってな具合で、やっぱ、差出人のシールに印刷しているwww.・・・・をメモったわけだ。
この空けっ広げなプライバシーのなさが、田舎町特有の地域社会なのだろう。
クリス君にしてもhirokoにしても都会育ちできている訳だから、少々おっかなびっくりだった。
しかし、若いうちはこういうことがうっとおしく感じていても、これから歳を食って行く二人にとっては、何となく心強い気がしないでもない。
このあいだなんぞはクリス君が郵便物を出しに行って、プリングルさんから「なぁ、クリス!・・・・」と声をかけられて、
「ぼくも名前を覚えられちゃったよ・・・僕こーいうのあんま・・・なんだけどなぁ・・」と言いながら戻ってきた。
「そりゃぁ仕方ないよ!こんな小さな街で、ましてや日本人なんぞという珍しい生き物を嫁にした男ってことなんだから、興味深々なんやない?」
あまりにも陽気で開けっぴろげで、悪気の無さ・・・とでも言うのだろうか?
しかし、本当にこのプリングルさんはプリングルというブランドをイキに着こなしているのには感心せざるを得ない。
実によく似合っているのである。
hirokoは昔から赤の似合う男が好きである。
赤はエネルギーの色だからだ。
まさにプリングルさんは「赤」のプリングルが似合っている。
昨日は日曜日で、新聞やちょいとしたスナックを買いにインド人の何でも屋へ買い物に出掛けた帰り、一人の男性が向こうからにうこやかにこちらに向かって手を降っている姿を捉えた。
何やら黄色いカートを引っ張っている。
良くみると、Mrプリングルである。
「どーしたのぉ?日曜日の朝だっていうのに?」
「新聞配達の若い子が風邪でダウンさ!僕が今日は新聞配達してるって訳さ!」
「ハードワーカーやねっ!」
プリングルさんは意気揚々とカートを引っ張りながら、日曜日の清閑とした住宅街の中へさわやかに消えていった。
とってもエネルギッシュで陽気で親切で、もし彼が議員へなんぞ立候補したら、政党に関わらず清き一票を投じて上げたい。
地域社会へのクリーンなイメージで持って表彰状を与えてあげたい様な奇特な人である。
前回のお見事さんはちょいと陰気だったが、今度は目茶くそ陽気に・・・とまいりましょう。
この名物ばぁさんの「お花ちゃん」に最初に遭遇した時には、全く腰がもげそうになった。
笑っていいものやら、目をそらさねばならないのやら・・・
しかし両目はやっぱり華々しい「お花ちゃん」に引力が強く働いてしまっていた。
前回に「下品」の代表格を紹介したが、このお花ちゃんは「上品」なおばぁちゃんである。レディース&ジェントルマンのお国であるからして、昔の人達はやっぱりレディース&ジェントルマンを地でいっている。
女も若い頃を過ぎて、結婚して子供を産んで育てて、ぐんぐんと衰えてくる。
女優さんやモデルさんならともかく、もう見てくれて、誉めてくれる人もいなくなる。
唯一見てくれて、誉めてくれていいはずの亭主もだんだんと構ってくれなくなる。
すると女という生き物はどんどんと汚くなってくる。
ましてや、亭主に先を越されてあの世へ見送ってしまったら最後、もう化粧なんてもんは必要なくなってしまう。
まさか、毎日やってくるポストマンの為に高い化粧品をせっせと買って、ペタペタお化粧して待っているばぁさんなんぞいたら、ポストマンだってたまんない。
(たまにはいるそうやけど・・・)
それでもUKでは、いつも小奇麗にしている上品なおばぁちゃんを数多く見掛ける事が出来る。
じゃらじゃらとしているんじゃなくて、ちょいとアクセントに襟元にブローチなんぞしてみたり、小粒のピアスをしていたり、長いコートに小奇麗なスカーフを・・・・
小汚いばぁさんを見るよりも、なかなか見ていて気持ちのいいものである。お花ちゃんの場合は、これとは同じたぐいとは言い難い。別に貴金属じゃらじゃらではないし、香水鼻もげらでもない。
お花ちゃんの場合は一点に集中しているのである。
問題は「頭」なのだ。
始めて会ったのはバスだった。
夏のポカポカ陽気の晴れ晴れした日だった。
バスが止まり一人の老人がタラップを上がってきた。
「ううううううっ・・・何?何なんだ?」と、目を疑った。
回りの人達の眼も、やっぱり彼女の頭に集中している。
彼女の髪はかなり長いのだろう、結って丸ぁーるく鏡もちのように顔の上にドデンと鎮座している。
そう、黒柳徹子さんのような頭を想像してくれればいい。
さぁ、この鏡もちの回りには・・・・これ以上刺せないってな数の造花が飾られているのである。
前だけではなくて、周囲をぐるりと花だらけになっている。
全く見事な色合いで、陰気なバスの中が、ぱぁーっと天国のお花畑に変身を遂げる。
(すげぇー!一体何本の造花が刺さってるのだろう?)
あまりの凄さに目が記憶喪失になりそうだった。(舞台女優やろか?・・・いやそれにしちゃぁ、造花と言うのが陳腐過ぎる)
(老人会の宴会?老人会の余興?社交ダンスの練習?)
(気は確かなんだろうか?・・・いや!それにしてはちゃんと料金ブースで老人パスを運チャンに見せている)いろんな憶測がhirokoの頭を駆け巡る。
世の中目立ちたい人はわんさかいる。
おばぁちゃん!お見事!とhirokoは熱い拍手を贈りたくなってしまった。
こんな見るからに陽気の塊のようなばぁちゃんが家にいれば、暗い冬も明るく楽しく過ごせそうだよな。
あたしもばぁちゃんになったらやったろかな?と、クリス君に言うと・・・・やめてくれぇー!さて、このお花ちゃんもただただやみくもに片っ端から造花を刺している訳ではないのである。
いろんなバリエーションがあることを発見した。
ある時には、鏡もちの回りがすべて「ひまわり」だったのだ。
「ひまわり娘」ならぬ「ひまわりばぁさん」である。
いやぁ、ただただ花を飾るだけでも大変な作業なのに、バリエーションまで存在するとはさすがのhirokoもおったまげ、再び深い感動に酔いしれてしまった。
季節によってバリエーションを変えているんだろうな。
凄いよなぁ。
この「お花ちゃん」に、底はかとないパワーとエネルギーを感じてしまった。いつもバスに乗ると、期待してしまうようになった。
「お花ちゃん、乗って来ないかなぁ・・・・」
ここはUK。
レディース&ジェントルマンのお国である。
古き良き時代のキャッチフレーズ。
最近はこの紳士・淑女の伝統がそこはかとなく失われつつある中、マッセルバラとて古き良き伝統とニューウエーブの波が混在している。hirokoとクリス君はこのマッセルバラに引越しして、早1年が過ぎた。
都会からカットアウトされた小さな田舎町。
二人とも田舎暮しは初めての経験である。
当所は不便さを時折感じてはいたが、やはり歳を食ったせいだろうか・・・・この田舎街が気に入ってしまっている。
どこでも住めば都と言う訳だ。
小さな田舎街なのだから、アバディーン時代と打って変わって、人口が少ない訳だから、変なことをすれば思いっきり目立ってしまいそうで、怖い。
まぁ、黄色い顔した日本人がブラブラ歩いている・・・地球の歩き方の本も持たずにカメラもぶら下げないで歩いていると、やっぱり思いっきり目立ってしまっているのはビンビンに感じている。
それが証拠にもう既に郵便局では「hiroko」という名すら覚えられてしまっている、毎日のようにブートレグのトレーディングでCDを発送しに出掛けているのだから・・・何か商売をやっていると思われてしまっている。
インド人の経営する「何でも屋さん」に久しぶりに出掛けると「最近見かけないね・・・商売でもやってるの?」ときたもんだ。
Everybody knows Everybody。
都会育ちの二人には、まごついてしまう、隣は何をする人ぞ?的感覚は若い年代ではうっとおしい限りではあるが、年寄りになってくると、むしろ有難いコミュニティーかもしれない。
今は未だ、少々うっとおしいのだが・・・さて、世の中にはそれはそれはいろんな人がいる。
このこんな小さな田舎町でも・・・うっ・・・うげっ!と目を疑う常識外れの人は、当然のことながら目立ってしまう。
この1年で見掛けた「うっ!うげっ!」の人をピックアップして紹介してみよう。第1巻目は「下品親娘」である。
世の中には大きく分けて「上品」な人と「下品」な人とに別れる。
自分がどちらに属するか・・・よう分からんが・・・
えてして上品なと自分ではそう信じていても、他人さんの目から見られたら「下品な人」と称される場合だってあるのだから、安心してはいられない。
例えば、家中にある貴金属という貴金属をじゃらじゃら身に纏い、家中にあるブランド品というブランド品を身につけて、香水という香水をシュパシュパふりかけてしゃなりしゃなりと歩いているおばさんという人種は間違っても上品な御婦人とは言い難いものがある。hirokoがこのマッセルバラで見掛けたこの親娘は、親は年の頃30前半から中盤あたり、中肉中背、髪は時折いろんな色に染め上げている。
美人でもなくとりわけ不細工でもない。
だが、見るからに下品なのである。
やはりこの女も貴金属をじゃらじゃらくっつけてはいるが、どうしても本物には見えない。
流行のファッションに身を固めているのが、どう見たって似合っていない。
自分は流行のファッションなのに、子供のそれをみるとセカンドハンドショプか誰かのお下がりものを着せている。
どう見たって、ちぐはぐなのである。
子供の方は娘さん。
年の頃は4歳あたり、こちらもとりててて可愛くもなければ、不細工でもない。
ありきたりの親娘と言いたいところだ。
ところがそうはいかない。
娘は娘で4歳という年令のせいもあるが、じっとしていない。
やかましい。
この親も子に輪をかけてやかましい。
とにかくこの親娘はやかましい・騒々しい、うっとおしい。
まるで台風のような賑やかさなのである。
賑やかなのは元気でいいじゃない?と思うだろ?
賑やかにも回りの人を和ませる賑やかさ、微笑みが浮かんでくるような賑やかさならいい。
だがこの親娘の賑やかさは、回りの人達の両目を足元に落としてしまうような、決して視線を合わせたくないような賑やかさなのである。始めてこの親娘の存在に気がついたのは、いつもの小さな郵便局兼スタンドショップだった。
CDの発送でhirokoは店に入った。
局員が1人しかいない郵便局なのだから、当然何人かが列を作っている。
列の後尾に並んでいるとこの親娘がいたのである。
子を見りゃぁ親が判るし、親を見りゃぁ子が判る典型的な悪例であった。
この子供は始終お店の陳列物を片っ端から小汚い手でさわりまくっている。
さわるだけじゃぁ物足りずに御絵描きなんぞを始めてしまう。
郵便局に陳列されているボールペンはちゃんとインクが出るのかどうかの試し書きが出来るような配慮がなされていて、小さなメモが置いてある。
この娘はボールペンを一本一本片っ端から取り出して、メモ帳にぐるぐると絵を書き始めた。
書いているのかと思えば、「あのチョコレート!あのチョコレート!」とチョコレートのBOXを取ってくれと親にせがむ。
親はチョコレートのBOXを娘に渡す。
チョコのBOXを持って大人しくするかと思えば、そうでなく、再び今度は店の商品に手を出している。
電球の入った箱から電球を取り出したかと思うと、その電球をポンとそこに放りだしたまんまにして、お次はボールペンを手にとり、商品であるところの雑誌の付録をめくって、何とそこにぐるぐるとやりだした。
うううう・・・ぐえっ!
hirokoは目を疑う。
回りのおばぁチャンたちも目を疑ってはいるが、誰も注意しようとはしない。
さて親は何をやってんだ?
親も列に並んでいるから、列から離れる訳にはいかない。
声だけはキンキン声で子供に向かって「やめなさい!やめなさい!」とは叫んではいるのだが、真剣に叱ってる
ようには聞こえない。
だいたい親に「やめなさい」と言われて「はい!やめます!」という4歳の子供がいるとは思えないが、しかし、親が離れられないのを幸いとこの娘はやりたい放題で遊んでいる。
メモの用紙がぐるぐる試し書きで満杯になって、床に散らばっている。
箱から取り出された電球、箱、はみがきチューブなどが無造作に散らばる。
(店の人・・どうして注意しないんだろ?)
何となく雰囲気ではもう慣れているって感じだろう。。。。やらせるだけやらせておけ・・・ってことなんだろう。
しかしこれほど落ち着きの無い可愛げのない子供をみるというのも始めてだ。
まぁ、やりたい放題店のものを散らかして・・・ようやく親が郵便ブースでの用事が済んで、今度は御買い物。
このやかましい娘に駄菓子を2〜3個買ってやって、ようやくこの下品極まりないけたたましい親娘は退散する時がやってきた。
「ああ、やれやれ」と列に並んでいた誰もが顔を見合わして「フゥー」と笑いながらため息を漏らす。
んが・・・しかしhirokoはしっかとこの最後を観ていた。
この娘は、親にねだって「買ってもらった」のではなく「取ってもらった」チョコレートのBOXをふわぁーっとジャケットの中に隠すようにして親のプリンプリンのお尻の後を急いで追いかけていったのである。
「うっそー!うげぇー!」
あのチョコレートは買われた訳ではない。
つまり、万引きである。
娘が単独でやっているのか?親も共犯なのか?
あまりにもの見事な行動に目が点になってしまった。
ああ、嫌なもんを見ちまった・・・一日が実に嫌な気分だった。その後にも幾度かこの下品親娘に遭遇している。
バス停でバスを待っている時も遭遇した。
今度はこの下品な親娘に加わって、もっと下品な男までくっついていた。
しっかし、まぁ、これほど見るからに下品な家族というのも珍しいではないか。
男はよれよれのジーンズに、顔には昨夜どこかで喧嘩したのか酔っ払って階段から転げ落ちたのか、至る所傷だらけで血のりまでくっついているまんまである。
この男とて、けたたましい。
前歯がぼっこりと抜けている。
まだ若いはずなのに、めっちゃくそ老けて見える。
何となくこの一団とは同じバスには乗りたくないと思ったので、同じバスに乗るのを見合わせてしまった。最近でもまたまたこの親娘にバスで遭遇した。
一つ向こうのバス停で乗ってきた。
相変わらずの親は相変わらずのファッションに相変わらずのじゃらじゃアクセサリーをぶら下げている。
バスが止まってこの親娘が乗り込む。
この親は家中から集めまくった1p2pコインを両手一杯に山盛りにして小さな料金箱にジャラジャラジャーンと入れ込んだ。
マッセルバラのタウンまでは80pでエジンバラまで行くのは£1である。
子供はタダだろうから・・・としても・・・1P2Pコインを混ぜ込んで80pにするとしてもかなりな数になる。
それを一気に料金箱に入れられたって、バスの運チャンがいくら優秀とは言え、たまったもんではない。
だいたいちゃぁーんと80p揃っているのか、疑わしい。
当然のことながら、運チャンは文句を言っている。
「親は親で何が悪いのよ!」とわめいている。
娘は無邪気を装っているのか、ただ単にアホウなのか、にこにこしながらそそくさとバスに乗り込んで、さっさと二階席に上がっていく。
1pや2pをバスの料金で使ってはいけないという決まりはないが、それでもある程度の常識というものがある。
・・・・この手でいつもやってるんだろうなぁ・・・・と観察していた。
運チャンとしても10pあたりが足りないからと、バスを止める訳にもいかないだろうから、根負けしてバスを発車させる。
下品と非常識もここまでやれば「お見事!」となってしまう。この親娘に出会った日は気分がズドーンと重たくなる。
親は救いようがないが・・・4歳の娘の末恐ろしい未来を想像すると・・・・